K

風に乗って、音速、光速、拘束も法則も道徳すらも超えて、まだこんな時間、夏なのに、皮膚外は真空、外気は冬より澄んでいて産まれたての氷のベイビーの心が、たらり、さらりと融解していく。
真空にココナッツと椰子の実が投げ捨てられ、小さな世界での生と死がミキサーで甘酸っぱい香り蜜と溶けあって、焦げ付いた記憶を映写機に捩り込む。
左手に打ち込まれる杭は孤独な程に幸せな人の罪、右手には温もりに溶け落ちた小さな死と自傷の罪。その磔が人々をあの男に釘付けにする。
そんな果ての話見えやしない、過去と未来は最高のセックスパートナーだ、今は逝く、その果て未来は鮮明に過去は曖昧に、ありもしない他人のフィルター越しの過去に変わる。
あんたの創造した未来。俺と過去が食い違ってる。噛みついた血の味が滲出すのはあんたの愛だったなら。俺はその廃墟の未来に、あの世の美しい花が咲くことを白昼夢の先に見続ける。繰り返す白昼夢は小さな死、その度に起こる聖なる傷は痛みだけの行い。アイスクリームのように溶けていく白昼夢は、溶けてしまえばただの吐気を呼ぶだけ。