アンコウ

深海に住む魚。光の届かない闇のなか、醜い姿をしている、ただそれも光がなければ意味はなく、醜いという概念はないもの。水圧は闇の重さなのでしょうか?光の当たる地上は、果てしなく自由なのでしょうか?宇宙?。いいえ地上は重力に押し潰されています。あの青くぼんやりと夜空に浮かぶ月と言うものが引き付ける引力。それでも空を舞うような素敵な引力は在りませぬ、例え月が孤独の果てに海を歪ませる程に引き寄せても不自由な重力に勝りませぬ。魚は水のなかでしか動けませぬ、自由なのです、水の中にいる限り、ただ更なる自由を求めれば、地上は飢えと渇きそして死。深く潜る先は闇の世界。遥か昔に祖先は地上で生きる術を不確かながら手に入れ、人間として生きる術を手に入れたそうですが、魚として生きることを過去の痛みを揉み消すように、黒く塗り潰すように恨みを込めて。汚く臭い水を流しています。変えようのない過去ならばせめてキレイにして欲しいと思うのです。汚染から逃げるように、深海へと、暗い闇のなか醜い姿をし、わずかな光を灯して這い擦り回るのです。空は翔べませぬが水の中はとても自由です、人間は窒息しますが、酸素も在りま
す。人間は裸になっても翔べませぬが、魚は裸でとても自由に生きているのです。