名前をつけてやる

此処にいますが、其処にもいます。
弧高でもありますが、底でもあります。
わたしは此処に今います、つい少し前まで其処にいました。あなたとは其処で出会いました、あなたはまだ其処にいますか?
何か其処にわたしは忘れ物をしてきたようです。何も其処には残っていないですか?
それにしても此処の居心地が悪いのは、わたしがどこか足りないからでしょうか?
何か無くした気がしてならないのです、其処で。
其処にいけば此処にはいれませぬ。近頃は首輪がキツイので其処へ行けませぬ。
なので、わたしは吠えるのです、遠吠えも負け犬のように。犬の声は人間にはとてもオカシな響きでしょうね。それも負け犬の遠吠えともなれば、腹を抱えてエサも投げず替わりに、くだらない言葉やゴミを残すのでしょうね。
ボロボロに汚れ、ただ空を眺めるわたしの狂気は夕日のよう、とても赤い。
赤い月がわたしの目に映る日は狂うのでしょう。首輪が焼け落ちるほど喉を痛めつけて声を遠くへ、此処から其処へもう一度。