ヴァイオリンの揺れ

here-there2005-11-10

空から舞い落ちる白い結晶が、何だかとても温かい。ふれると肌に染み込むように消えていく。そんな温かな雪は、冬の枯れた山の黒さを白で包み込み山を暖めている。やさしく包み込むように、葉が黄色く、そして赤く、枯れ落ち、寂しく冷え切った山を抱きしめ、全てが死に絶えても、また新しく命が生まれるために、雪は白い大地を山へ届ける。
人が山を乱し、敷いた黒いアスファルトの道さえも、雪は白く塗り替える。絶えず山の命に安らぎを与えないノイズが岩を泣かせる、泣き崩れた岩は人の敷いた道に崩れ落ち嫌な音を残し、痛みを分かち合う。そして静かな山の静寂を取り戻す。
人の黒い心さえも、雪は温めてくれる、雪と共に溶けていく。ドライアイスですら火傷する、雪の冷たさは温かい。心地よい温かさ。そして静寂は世界の速度を緩める、加速して黒くなった世界は何だかごちゃごちゃした雑踏、ビル、人ごみに溢れてる、白く包まれた世界は、人を裸の砂漠へ導く、道を失い、彷徨う、それでも静寂、雪の舞い降りる速度で、白い結晶は血流をなだめる。
白い静寂の世界へ迷い込んでもそこは、自由だ。どこへでもいける、彷徨ってるわけじゃなく、ただ歩いてる自由に、道もなければ従うことはない。ただ心の平和に、安らぎに身を任せて、ふわふわと。