一億分の一

種を蒔いたりした。植物人間の種。俗に言う植物人間とは違う。ただ植物ってイメージが強いので、そう呼んでる。おかしな種で、それは俗に言う実でもあるし、それ自体が本体であり実も葉も茎もまとまってる人型のものもある。いくつかのタイプが目の前にあった。実は腐るだけだった、そうだよな、すでに植物として熟していて成長という概念でいえば死期だから。腐った林檎という表現そのまま、腐ったその匂いで気分が悪い、でもそれは毒を食って生きるものにおいて必要。種はあれからずっと光のある表面にでてこない、どうやら俺が地下の世界まで見ていないので、暗い世界で着実に根を広げ、巣くって潜伏している可能性がある、何を栄養としているかも不明だ。地表の光を浴びて死ぬのか、世界を脅かす悪魔の実を実らす、生命の根付く地球のコアに触れて死ぬのか、もしくは食虫植物なのか。一番興味深いというよりわかりやすいのは人型のやつだ。昔流行った音楽に合わせて踊る玩具のようにいい音楽があるとご機嫌に揺れてる。乾いている時は酒が良い、少しだけ花の色が赤みを帯てかわいい、あげすぎると翌日は気持ち悪そうに花の色が青い。たまに花粉を飛ばしてる、なんだかそれは不快な事が多いがその
植物なりの求愛なんだろう、人間臭さが愛しい。最近は花の色がランダムに変わるので機嫌がとれない。少し棘のような突起が茎の辺に見える、きっと鉢というのが不自由なんだろう、夜に光る電気がストレスなんだろう、耳にするニュースが理不尽で勝手な人間のエゴが丸見えなんだろう、空気が悪いのだろう、その為の棘がスベスベの肌から生まれようとしてる。いくら人型でも、逃げることはできないので、棘で守るしかないのだろう、桃色の花なんて咲いていた頃が懐かしい直ぐに血生臭い赤い花、棘のある薔薇の赤い花になって散ったが。不思議だな、これを奇形と呼ぶのだろうか奇跡と呼ぶんだろうか、植物人間と呼ぶのだろうか。