あしながおじさん

彼は裸のまま人混みに放り出されていた、街行く白い目をした人々に彼の存在は見えていないだろう。彼は人々をガラクタとかわめき散らすカラスの鳴き声としか思っていないのだろう、何だかにやりと微笑んでいる彼、ぐにゃりとした奇型なポーズで自分を写真にとったが、どうやら写っているのは、真っ白な顔でスーツやら色気もない露出された白い肌の女ばかりのようだ。彼は仕方なくビルの屋上から飛び降りた、その瞬間を切り取るために、パシャという軽快なポップソングのイントロを切り取った音にかかったエフェクトは鈍いぐにゃっとした音。彼は少し首やら背中を痛めたような顔でまたにやりとして、歩きづらそうにゴミの上をゆらゆらと。彼は振り返ると自分の後ろに赤い人影があることに気付いて少し頬を染めて恥ずかしそうにした。彼の電話が震え、通話をおすと、サイレンの音だけがした。直ぐに切れて、彼は自慰行為に耽った。工事のドリルが絶え間なく響くその横で。死んだように目を開いて動かなくなった。ゴミに埋もれ動けない、ノイズに紛れて聞こえない、フラッシュの連続で見えない。静寂、魂の鼓動、空を舞う快楽。この壁白すぎるわね、汚したら?
あんたの生きた証明よ。その向こうへいくんでしょ?その白い壁。透き通るように白い壁、決して透明ではない。あー凄く白く白く濁ってるね。あーどれだけブリーチしてもあぁ白いね、嫌になる。完璧なハッタリ。向こうは見えないね、素敵な嘘描きましょう。夢物語。本当に欲しいものを手に入れることは恐ろしい、殺される気分になる。ある日、足の長いおじさんが欲しいものをくれたら、きっと箱のなからナイフがとびたしてきて一瞬で心臓を貫くさ、ドアベルが銃声になるさ。