喋る鳥

here-there2006-07-25


ふとあの声が目を覚ます。日がロクに差さない部屋で埃まみれのスピーカーから、あの声。
もうあの声が変わることはない。変わるといえばこの部屋の温度とここに住む人間の心。あの声がいつも過去の世界へと連れていく、いや過去ではなく、心の奥底の不変な場所へ。
時と共に変わっていくと、人々は言う、何故?それなのにまたあの声に耳を傾ける人々は?
過去の闇を呼び起こす、あの狂暴なやさしい声は光。あなたの闇にもあの声が届きますように。
あの声は真似できぬ、それは人が他の誰にもなれないという前提において。あの声がただ独りの男の存在を表す声であるから。ただあの声が多くの人間の声として言われるのは同時に、人々の普遍的な闇と重なるからである。それは人が鳥にはなれない前提の上であるが。
いつかあなたの声が空に羽ばたいて欲しい。あなたの魂が空に帰る前に。